海宝堂〜海の皇女〜
声も出ない悲しみ…
ガルはただ、ただ、シーファの体を抱き締めた。

ニーナは泣き崩れ、リュートは何度も拳を床に打ち付けた。

アリアはシーファの手にすがり泣き伏せ、何度も名前を呼んだ。

セイドがシーファの傍らに静かに浮かぶトライデントに手を伸ばす。

その時、トライデントは強く光を放った。

「!?」

トライデントの光はシーファを包み、ガルの腕から引き離そうとした。


「シーファに触るなぁっ!」

そう言って、シーファを強く抱き締めようとしても、するりとすり抜けていってしまった。

「王家につたわりし神器、トライデントよ!
我が娘をどうするつもりか!?
そして、何故、正統なる後継者の我が娘の命を奪った!」

セイドが問い掛けると、トライデントは光を強くした。

『…この娘は、我が力を与えるに相応しい者であり、強く我が力を欲した。』

「トライデントが…しゃべった…」

頭の中に声が響く。

『我はその心に反応し、この娘に力を与えようとした。

しかし、この娘は我が力を自分の物にすることで、継承するべき王位を拒んだ。

王位を継がぬ者に我が力は貸せぬ。制御できぬ。
制御できねば、あの者のように泡となる。

娘は言った。

《自分の身は自分で守る、だから、あなたはただ、国と仲間を護って》と。

我は言葉通りにした。

それが、真相だ。』


「シーファ…」

みんなが安らかなシーファの顔を見た。

涙が止まらない。

トライデントは静かにそれを照らしていた。
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