海宝堂〜海の皇女〜
「シーファ!」
ニーナが海に向かって叫ぶが全く浮かんでこない。
「おいおいおいおい…」
3人の血の気が引いていった。
また大亀がゆっくりと動く。
今度こそ船がひっくり返ると、覚悟を決めたが、大亀は首を伸ばし、海の中を探る。
それはまるで餌を探しているようにも見えてますます血の気がひいていく。
「くそっ!
ニーナ!あれ、持ってこい!」
ガルが体勢を立て直し叫ぶ。ニーナはうなずいて、船室に戻ろうとすると、
ザバぁっ!
豪快な音と共に、大亀が首を出した。
その口の先にシーファが上手くくわえられていた。
「おい、亀っ!そいつら返せ!食っても美味くないぞ!」
「バカ!言って通じる相手じゃないでしょ!」
「ニーナ!早く行けっ!」
この大亀に、中途半端な攻撃は効かない。
ならば、と、ガルは覚悟を決めていた。
ニーナが傾いた甲板を駆け降りようとすると、大亀はニーナの前にシーファをくわえたままの首を伸ばした。
すとん。
大亀はシーファを甲板に降ろした。
「え?あ…あれ?」
大亀はゆっくりと海に沈み始めたので、ガルは船に戻る。
大亀が消えていくのを見送り、船が水平に戻ってもしばらく唖然としたままだった。
「なんだったんだ?一体…」
4人は疲れを吐き出すように息を吐いた。
やっと落ち着きを取り戻したマシュー号、ガルはキッチンで片付け、リュートは見張り台、ニーナは舵を取り、シーファは甲板で海を見ていた。
「随分来たけど、その神殿のある島ってまだなの?」
シーファがそう言った時、不自然な風が通りすぎた。
「―――っ!」
腕に痛みを感じて左腕を見ると肌が、綺麗に裂けていた。
激しい痛みに思わず膝を付く。
「シーファ!?
なにこれ…深く切れてるのに血がほとんど出てない…」
ニーナが駆け寄り傷を見る、本当に“裂けている”が一番妥当な表現だった。
「ガル!救急箱!リュート!何見張ってたのよ!」
「んなこと言っても、何も…!――ってぇ!」
今度はリュートの頬が裂けた。みんなが見張り台を見上げると、リュートは船の左後方を指差していた。
その先には一艘の小さな船が浮かんでいた。
ニーナが海に向かって叫ぶが全く浮かんでこない。
「おいおいおいおい…」
3人の血の気が引いていった。
また大亀がゆっくりと動く。
今度こそ船がひっくり返ると、覚悟を決めたが、大亀は首を伸ばし、海の中を探る。
それはまるで餌を探しているようにも見えてますます血の気がひいていく。
「くそっ!
ニーナ!あれ、持ってこい!」
ガルが体勢を立て直し叫ぶ。ニーナはうなずいて、船室に戻ろうとすると、
ザバぁっ!
豪快な音と共に、大亀が首を出した。
その口の先にシーファが上手くくわえられていた。
「おい、亀っ!そいつら返せ!食っても美味くないぞ!」
「バカ!言って通じる相手じゃないでしょ!」
「ニーナ!早く行けっ!」
この大亀に、中途半端な攻撃は効かない。
ならば、と、ガルは覚悟を決めていた。
ニーナが傾いた甲板を駆け降りようとすると、大亀はニーナの前にシーファをくわえたままの首を伸ばした。
すとん。
大亀はシーファを甲板に降ろした。
「え?あ…あれ?」
大亀はゆっくりと海に沈み始めたので、ガルは船に戻る。
大亀が消えていくのを見送り、船が水平に戻ってもしばらく唖然としたままだった。
「なんだったんだ?一体…」
4人は疲れを吐き出すように息を吐いた。
やっと落ち着きを取り戻したマシュー号、ガルはキッチンで片付け、リュートは見張り台、ニーナは舵を取り、シーファは甲板で海を見ていた。
「随分来たけど、その神殿のある島ってまだなの?」
シーファがそう言った時、不自然な風が通りすぎた。
「―――っ!」
腕に痛みを感じて左腕を見ると肌が、綺麗に裂けていた。
激しい痛みに思わず膝を付く。
「シーファ!?
なにこれ…深く切れてるのに血がほとんど出てない…」
ニーナが駆け寄り傷を見る、本当に“裂けている”が一番妥当な表現だった。
「ガル!救急箱!リュート!何見張ってたのよ!」
「んなこと言っても、何も…!――ってぇ!」
今度はリュートの頬が裂けた。みんなが見張り台を見上げると、リュートは船の左後方を指差していた。
その先には一艘の小さな船が浮かんでいた。