海宝堂〜海の皇女〜
シドの態度にリュートはムキになって怒鳴った。

「なんだってんだ!人をバカにしやがって!」

「やっぱり坊主は坊主だな。
俺は殺せと依頼を受けたんだよ、当然、依頼を完了した証拠がいるだろ?
死体を出せば、王だって諦めも付くってもんさ。
それになにより…殺しは俺の楽しみなんでな、それを止めろと言われても無理な相談だ。」

リュートとは正反対でシドはあくまでも冷静、いや、まるで今晩の献立を決めるかのようにさらりと言った。
黙ってしまったリュートに嫌味な笑みを送ると、背中から剣を抜いた。
真っ直ぐに伸びたその剣は怪しく光り、シーファの青い顔を映し出していた。

「!!その剣…まさか…」

驚愕の表情で剣を見つめるニーナに片眉を上げてシドが嬉しそうにそれを掲げた。

「ほう…こいつを知ってるのか?中々の冒険をして来たんだな、まだ若いってのによ…
そうだ、これは伝説の武器、名を“繰風(くりかぜ)”と言う。」

そう言いながら振り下ろすと、剣から目には見えない何かが飛び、シーファの頬をかすめていった。

「わかるか?何があんたを傷つけたか?」

「…………かまいたち、か。」

ガルがシーファをマストの後ろに押しやりながら言った。シドは嬉しそうにうなずいている。

「名前の通りだ。この繰風は風を操り、敵を切り刻む。相手が血だらけで死んでいくのを見たい俺にぴったりの武器だ。
おら、そこどけ。金にならねえが死にたいならお前らも殺すぞ?」

かまいたちがガルの足を傷つけた。
攻撃はそれで終わらず、次々とかまいたちがリュートとガルに傷を増やしていった。

シーファはマストに寄りかかってまだ呆然としていた。と、頬に強烈な痛みが走った。顔を上げるとニーナがこっちを睨んでいた。そしてようやく、殴られたのだと気付いた。
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