海宝堂〜海の皇女〜
なかなかシーファから離れないポムにリュートがしびれを切らして言った。

「シーファ〜そろそろ行こうぜ〜城までこっから遠いんだろ?」

シーファがごめん、と振り向くとポムが老人とは思えない速さでリュートの前に詰め寄った。そして、強烈な一撃がリュートの頭に落ちたのだった。

「いてぇっ!なんなんだよ〜俺ばっか…」

「あんたバカね〜ペックさんにもそれやられたじゃない。」

「シルフェリア様を呼び捨てにするんでない!」

ニーナは、ほらね、という顔をしてみせた。
リュートは目に涙を溜めてポムを見上げた。

「分かったのか、分からんのか!」

「ポムじいちゃん!止めてよ。
いいの、言ったでしょ?大切な仲間だって。命の恩人でもあるのよ?」

シーファが言うとポムは目に見えて驚いた顔をした。命の恩人という言葉がかなりショックだったようだ。突然おろおろとしだして、シーファが怪我をしていないかシーファの周りを回り出した。

「大丈夫、大丈夫だからっ。
それより、みんなに自慢のスープを食べさせてあげてよ。私も久々に食べたい。」

「わしのスープを、ですか?
しかし、シルフェリア様の恩人でしたら、城で盛大な食事でも…」

「そうだぞ、早く城に……行きましょう、シルフェリア…様。」

ポムは満足そうにうなずいた。

「いいの。この国で一番美味しいのはポムじいちゃんのスープだもの。みんなには一番の物を食べて欲しいの。
私が真似出来ない味なのよ?食べてみたいでしょ?」

美味いスープと言われて、ガルが黙っているはずがなかった。真似出来ないと言われれば余計血が騒ぐのだ。
シーファはポムの手を取って続けた。

「ついでに今晩、泊めてくれない?
…城には明日朝一番で行くから。」

目を丸くした3人だったが、シーファの表情をみると承諾せざるを得なかった。
3年ぶりに帰る、すてるつもりの我が家。簡単に決心はつかなかった。

ポムが街のみんなが喜びますわい、と快く了解してくれると、5人は街へと歩いていった。
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