海宝堂〜海の皇女〜
街はシーファが話していたように、レンガ造りの家が所狭しと並んでいた。それぞれの家からは夕食の準備の煙りといい匂いが空へと昇っていっていた。

「ポムじいさん、お客さんかい?珍しいね、そんなに大人数で……………………………シルフェリア様っ!」

手に持っていたじゃがいものかごを落としてポムに声をかけた女性が悲鳴をあげた。
その声で近所の人達が一斉に顔を出した。
そして、人が2人通るといっぱいになってしまう道は出てきた人達で埋まってしまった。

「…なんだ?こりゃ…むぎゅ…」

「これが…シーファの人気ってわけ?」

人に押し潰されそうになりながらもリュート達は必死でポムとシーファについていった。
ポムはリュート達と同じような目にあっているが、シーファには人は群がっているものの、押し潰されてはいなかった。調度、シーファの周りだけバリアが張られたかのようにすき間が空いていた。
シーファは笑顔でみんなの声に耳を傾けていた。

「シルフェリア様、お城に戻られるのですか?」

「ううん、今日はポムじいちゃんの家に泊めてもらうわ。久しぶりにスープを飲ませてもらうの。」

「あらまあ!それじゃ、私はケーキを持っていきますわ!」

「私は焼きたてのパンを!」

「シルフェリア様!見てください、今年のじゃがいもは立派でしょう?」

全く途切れない人の波にリュート達の意識が限界に達した時、前方から怒鳴り声が響いた。

「ええいっ!シルフェリア様は長旅でお疲れじゃ!今日はこのくらいにしておかんか!」

ポムの一声で人の波はあっという間に引いていった。

「………助かった…」

「みんな、大丈夫?はは…ごめんね。ビックリしたでしょ?」

「…ふぅ…いつもこんな感じなの?ちょっとしたお祭りね…」

リュートもニーナも髪は乱れ、服も乱れ、やっと息が出来ると溜め息をついた。

「あれ?ガルは?」

姿の見えないガルをシーファが探す。
リュートが後ろを振り向いてゆっくり指を向けた。

「お、おい…あれ…まさか…」

ガルは脱落してボロ雑巾のようになっていた。
< 63 / 200 >

この作品をシェア

pagetop