海宝堂〜海の皇女〜
目の前にいる人物こそが、シーファを5才の時から鍛え続け、時にはまともに見れぬ顔にしたという師範であり、今は引退してしまったが、歴代の中でもトップクラスの護衛総隊長でもあったと、嬉々としてシーファが語るのを3人は黙って聞いていた。
ポムは、恥ずかしいと言って、キッチンに戻ってスープ作りの続きに取りかかっていた。

「は〜あのじいちゃんがなぁ…人は見掛けによらねえな…」

リュートが道理でいてぇはずだ、と殴られた頭をさすった。

「ホント…
だから、事情を知ってたみたいだったのね。」

港で会った時の反応が修道院から戻ってきた王女に向けたものではないと、ニーナはずっと引っ掛かっていたのだ。

「いいのか?その息子がここに戻ってきたら一騒動だぞ。」

「大丈夫。護衛兵は基本的に24時間交代なの。だから今ここにいないのなら、明日までは戻らないわ。それにジムならわかってくれるもの。」

「シーファ。そいつと仲いいのか?」

リュートがニヤついた顔で聞く。視線がガルの方を向いる、興味はシーファとジムの仲よりもガルの表情らしい。
ガルはまたか…と取り合うのも疲れ、黙って聞いていた。

「仲って…小さい頃から知ってるけど、年が離れてたし、訓練も1人だったからそんなによくは…それがなに?」

「いや、別に〜」

ニヤけるリュートの頭を小突いてガルがキッチンに入っていった。
頭をさするリュートを見てシーファはニーナに何?と聞くが、ニーナは笑うだけだ。

と、ドアをノックする音が聞こえた。

「すまんが、出てくれ。手が離せん。」

キッチンからの声にニーナがドアを開ける。と、さっきのガーラが白い布巾のかかった皿を手に立っていた。

「あら、ポムさんは?」

「あ、今、キッチンに…」

ガーラは自分の家のように中に入ると、シーファの前に皿を置いた。

「シルフェリア様、ケーキをお持ちしましたわ。ガーラ特製のフルーツパウンドケーキです。お好きだったでしょう?」

そう言って布巾をとるとふんわりといい匂いが部屋中に広がった。
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