海宝堂〜海の皇女〜

ガーラが手際よく、シーファ達の前に紅茶を用意していく、その慣れきった手付きに、何も口出し出来ないでいると、ガーラは最高の笑顔を向けた。

「さあ！シルフェリア様、どうぞ召し上がれ！」

「あ…うん…でも、ポムじいちゃんのスープがまだなのに、先にケーキ食べていいのかなぁ？」

「もう少しお待ちください、シルフェリア様。
ガーラ、わしのスープがもうすぐ出来る、ケーキはそのあとじゃ。」

ポムがキッチンから出てきて言った。
大した奴じゃ、と、ガルに後を任せてきたらしい。
ガーラは露骨に嫌な顔をしてみせた。

「そんな顔をするでない。食事の順番は大切じゃ。」

「ガーラさん、ちゃんと後で食べるから、ね？」

シーファがガーラをなだめると、今度はしゅんとして食器棚に向かい、スープの皿の準備を始めた。
その動きは本当に自分の家のようだ。

「よし！完成だ。ポムじいさん、どうだ？」

完成したスープの鍋をガルが嬉しそうに持ってくる。味見をしたポムがにっこり笑うと、どんっと音を立ててテーブルの真ん中に鍋が置かれた。なんとも言えないいい香りだ。
待ってました！とみんながテーブルにつく。

そのスープはこの国ではポピュラーな物だったが、家庭によってその味が違い、シーファはポムのスープが一番好きだった。

スープが盛られた皿を目の前にみんなの喉が鳴った。

「わぁ、やっぱりいい匂い。さぁ食べましょう。」

シーファ達がスープを口に運ぶのをポム、ガーラは微笑んで見つめた。


『………おいしいっ！』

そのスープはみんなの声がそろうほど美味しく、あっという間に皿は空になった。すかさずリュートがおかわりに皿を出そうとした時、またドアをノックする音が聞こえた。
ポムがドアを開けると、ガーラと同じように、シーファにあれを持ってきた、これを食べて欲しいと、街の人が列を作っていた。

「ダメよ！私のケーキが一番！」

押し入ってくる人達にガーラが対抗するが、ポムの家はさっきの道のように、すし詰め状態になってしまった。