海宝堂〜海の皇女〜
マーリンの腕の中で暴れるシーファを慌てて護衛兵が2人出てきて押さえる。

「シルフェリア、よく聞け!この国にはお前が必要じゃ!」

「それでもっ、私は海に出たいのですっ。
彼らと一緒に…っ。
こんなやり方、あんまりです!騙して戴冠をさせるなんて…彼らになんと言って騙したのですかっ?」

シーファは2人の兵士が止めても気を抜くと振りほどかれてしまうほどの力で、マーリンに対峙した。

マーリンは静かに首を振った。

「……シルフェリアよ、彼らの欲しいのはお前ではない。
国を守護せし、海の神の紋章だ。」

シーファの力が一気に緩んだ。
目を見開くシーファにマーリンは続ける。

「お前を連れてきた報酬だと、紋章を型どった首飾りを要求し、わしはそれに従ったまでじゃ。」

シーファの足から力が抜けた。
押さえていた兵士達が今度は支えるのに変わった。

「そんな…だって…」

彼らは『海宝堂』。
モットーは『宝の為ならどんなことでも』。

シーファを連れていくと決めたのは、胸の紋章がきっかけだった。
そして、今、代わりが見つかった…
シーファはもう用済みということだ。

シーファの頬に静かに涙が流れ落ちた。

「あ…嘘よ…だって…
置いてかないって、言ったじゃない…」

支えられても立てる状態ではなくなったシーファが呟いた。
マーリンが優しく抱き締め、髪を撫でた。

「可哀想に…シルフェリア…お前にはこの国がある。この国の民は全て、お前を愛しておる。
今までのように、幸せに暮らそう。」

「うう…っ…父上…」

シーファは涙で濡れた顔をマーリンの胸に埋めて泣いた。
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