海宝堂〜海の皇女〜
うなずくマーリンにガルが口を開く。

「あなたはシーファに国の為にここに留まるように望んでいるが、ただ、シーファに国を治める力があるから、それだけか?」

「いや、そうではない…
私達に血の繋がりが無いのは聞いているか?」

3人がゆっくりうなずく。

「シーファは、どこの国の、どんな親の子か分からぬ子じゃ。

しかし、わしの唯一の娘なんじゃ。

子供が欲しくてたまらなんだあの時に、授かった宝…

愛しておるからこそ、今は海には出せん。」


「……………わかった。

紋章を受け取り次第、この島を離れる。
後は好きにしてくれ。俺達は憎まれ役でも構わない。」

ガルはそう言うとマーリンに背中を向けた。

「ありがとう。紋章は後で城の者に届けさせよう。」

「え…おい…ガル…」

1人戸惑うリュートを無理に引きずって、マーリンの部屋を後にした。


「いいのかよ?シーファとの約束、破るんだぞ?」

リュートが無言の2人の前に立ちはだかる。

「リュート。
取ってはいけない宝もあるの、あんたも分かってるでしょ?」

「………わかったよ…」

3人はシーファに嘘を付き、背中を見送った後、紋章を受け取った。

すぐに出るつもりだったが、こっそりとシーファの晴れ姿を見てから行く事をマーリンに許してもらい、シーファと会わぬまま、夜を明かした。


そして、戴冠式…
いつもの服装のまま、最初に入ったドアで、シーファを待った。
シルフェリア王女と生まれ変わったシーファは美しく、高貴で、遠くからでも見ることが出来て満足だった。

「綺麗だな…シーファ…」

「ええ。」

ガルは何も言わず、シーファを見つめていた。
その視線を感じ取ったのか、シーファのそれと重なりあう。

「…行くぞ。」

ガルは目を伏せて、シーファに背中を向けた。
リュートとニーナももう振り返ることは無かった。
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