魔王と妃

追憶

――そなたは妾の恩恵を受けし娘。妾の愛しい子‥
王に愛され美しく咲き誇る華となるのですよ


星神様
あなたはどうして私を造りあの方のもとへ送ったのですか‥
私はあの方に愛してはいただけませんでした
この体は私の意思など存在しないように陵辱され
首輪をつけられ部屋に監禁‥
まるで見世物のように大衆の面前で拷問され
死ぬことも許されず‥
深淵の国での孤独を癒してくれたのは
地の底で思うあなた様の宮殿での日々のみ‥



私はもう疲れてしまいました―――





「とりあえずは我の城へ連れてきたものの‥すぐにゼブルの追手が来るだろう。」


我は奴にあまり信頼されてないからな。
と自嘲気味に笑う大魔王はどこか楽しそうな雰囲気で、まるでこの逃走劇を鬼ごっこでも楽しんでいる子供のように表情を崩した。


「さて、どうしたものかな。いかに我とて奴が本気で攻撃を仕掛けてきたら勝てる気がしない‥」


「ルシファー様、笑っている場合ではありません。」



己の后に叱責され、そうだな‥と頭を悩ませる大魔王を見て己が如何に迷惑をかけてしまっているのか実感する


「あの方にとって私は都合のいい人形のようなものなのです。きっと追手など来ることはないとおもいます。」


表情を崩さず己の思いを口にすると何故か大魔王は驚いた表情を浮かべる


「そなた‥いや、いい。さて、遊びはここまでにしよう。我は我后と同じく星神の恩恵を受けた娘が苦しんでいる姿を見るのは辛いのだ。そなたが望むのであれば‥何年匿えるのかはわからないが‥人間として地上で暮らせるようにしてもいい。」

本気のゼブル目をどれほど誤魔化せるかはわからないうえに‥人間になったとしてもその力は封印するだけ。記憶も残る。

と付け加え、提案してくる。


「今の生活が変わるのであれば‥私は‥」


その先の言葉が続かず、瞳から大粒の涙が流れる。
涙はいくら流しても枯れないということは既に分かっている‥
瞳から紫色の魔石がハラハラと落ちる



「我がいうのもなんだが‥ゼブルの愛は相当歪んでおるからな‥」


「エミ様、星神様より恩恵を受けた娘たちは王と番になる定めを持つ娘たちです‥本能で求め合うようになっております。ゼブル様だってけして例外ではありません‥どうかそれを忘れないでください。」



最後に聞こえた言葉は大魔王の后である彼女の悲しそうな言葉であった
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