アリスと不思議な国
「え、な、何?!いきなりお礼なんて言われても困るわ!しかも私はただうさぎを抱き上げようとしただけで…助けた覚えなんてない!」

戸惑いながらもアリスは少年に向かってそう言います。

けれど少年は

「いいえ、助けてくれたのはあなたです。」

首を振り笑顔で答えました。

そして

「これもなにかの縁、どうかお話を少し聞いてはいただけませんか?」

と続けました。

「は、はぁ…。」

しぶしぶですがアリスは少年の話を聞くことにしました。


―――……

「つまり、この国の人々はチシャ猫という魔法使いに魔法をかけられてしまったということなのね。」

「はい、しかも一人一人解け方の違う厄介な魔法を。」

「へー大変ねー。」

「随分と他人事なんですね。」
「えぇ、だって他人事ですもん。ところで、あなたはどんな魔法をかけられていたの?」

「はぁ、そうですか…。僕は人に優しくされないと解けない魔法です。」

「何でそんな?」

「僕、実は道化師で傍観者…つまり観客という役目をしているんです。だから目の前に人がいても、まるでテレビを見るかのようで人に全く会うことはありません。もうずっと見ているだけ…そんな僕だからこそ、優しさを心の奥底で求めていたんでしょう…。」

そう話し終わった少年の目は少し潤んでいるように見えました。


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