アリスと不思議な国
おかしな人々
「ねぇイナバ、さっきから歩いてるけど道、わかるの?」
「は?わからなくて俺が歩くわけねぇだろ。」
「そうなの?」
「おう。」
また無言で二人は歩きます。
「ねぇ、イナバって二重人格なの?」
「どこが。」
「え、ここが…?」
「ぷっ、なんだよそれ。」
隣で吹き出して笑うイナバを不思議に思いながらアリスは「だって、」と続けます。
「ただ、あっちの方がいいんだよ。初対面の印象は大切だろ?」
「まぁ、そうだけど…、」
確かに初対面で今のイナバでこられても困るとアリスは思いました。
「やっぱり、雰囲気服装とあってない気がするわ。」
「失礼なやつだな。」
「でもね、」
そう言ってアリスはイナバの頭から足の爪先まで一通り眺める。
頭から黄金(こがね)色に輝くふんわりとした少し長めの髪に、整った顔に紅い切れ長の眼。
服装はグレーの短めの燕尾服に上とセットらしい長いズボンに革の靴。
ポケットからは大きな銀時計も顔を覗かせています。