デュッセルドルフの針金師たち後編
第9章スイス

アイガーの北壁

真冬のスイスはすばらしかった。列車はインターラーケンから
グリンデルワルドに登る。そこからはケーブルカーだ。
アイガーの北壁をくぐり抜けてケーブルカーはひたすら登る。

途中、北壁に窓がくり抜いてあってグリンデルワルドの村が
眼下に小さく見えた。『こんにちわ』と窓の外から岩盤の
ひさし越しに岩登りの登山者が今にも入ってきそうだ。

終点から徒歩で氷の洞窟アイスパレスをきわめてゆっくり
ゆっくりと歩き抜けて外の頂上に出る。すばらしい眺めだ。
東に4000m超えのユングフラウヨッホの雪峰。北に

メンヒと反対側に007の映画の舞台になったフィルスト
の山とすばらしい斜面。そして南にはイタリアへとつづく
大氷河。実にすばらしいアルプスの峰峰だ。

どうだ、すごいなマメタン。よかったな、ほんとにマメタン。
トニーザイラーの歌が聞こえてきそうだ(ふるいなあ)。

感激のアイガー山頂だったが、下る頃からオサムはだんだん不機嫌
になっていった。まだ一度もスキーをしたことがないのだ。マメ
タンは何度か信州にすべりに行ったとかで早く滑りたがっている。

とにかくグリンデルワルドのユースに長期滞在の覚悟で泊まる。
ここからのアイガーのながめは最高だ。三日に一度は出るホンヂュ
にうんざりしながら、今日も風邪気味と言いつつスキーを逃げていた。

4日目旅の日本人でスキーの初心者が来てくれて、やっと生まれて初
めてゲレンデに立つことになった。レンタルスキーもクナイセル、

ロシニョール、ヘッドばかりだ。日本にいるスキー好きにはたまら
ないだろうな。レンタル料1日千円、周りは全てゲレンデだ。

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