デュッセルドルフの針金師たち後編

アムスにて

さあ、カルマンギアに5人で乗ってデュッセルを出発。
オランダアムステルダムへ向かった。ちょっと不安だった
のが国境だったがやはりマメタンが引っかかった。

オランダに入国拒否とのこと。国境ゲート前で協議する。

「私いいわよ、列車で帰ってデュツセルで待ってるわ」
オオツキ「ほかのところぬけたらあかんかな?」
オサム「出れたとしてもまた入国不可やで」
オガワ「新しくパスポート作ったら」
ボンボン「あ、それええ考えや」
オオツキ「あほか、時間かかるがな。領事館は
     クリスマス正月は休みやで」
ボンボン「そんなあほな」
オオツキ「それに、せっかく取ったコペンのワーパミ、
     パーになるしな」
マメタン「私、正月開けにパスポートを再発行してもらうわ。
     要領分かってるし」
オサム「そやな。ワーパミもういらんやろ」

これで決まった。

マメタン「10日間ゆっくり羽を伸ばしておくわ」

またここでオサムはマメタンを残して彼らについていく。
スキーの時といっしょのパターンになった。

オサム「花嫁衣裳はコペンで買おう。俺のスーツだけ買ってくるわ」

国境の駅で彼女を皆で見送って4人でオランダへ入った。
ユトレヒトからもうすぐにアムステルダムだ。東京駅とよく似た
中央駅の近く、飾り窓の女で有名な一角にアムスのユースはあった。

旧市街のダム広場。石畳にやたら犬のくそが目障りだ。
いたるところ橋ばかり。ユースの前でもマリファナを売っている。
そういえばこの春先マメタンとパリからアムスに立ち寄った。

駅前通りの映画館でなつかしのサンダーバードをやっていたので
中に入ったらなんと灰皿つきの座席だった。あの時は2人ぼっちで
すぐ翌日デュッセルドルフへ急ぎ戻ったな。

夕暮れともなると2,3軒おきに大きな窓越しにそれらしき女の人
が窓際に腰掛けて、それとなくしなを作っている。とんでもない
年増さんもいる。若い娘は少ないみたいだ。ドイツよりもオープン

な明るい公娼制度、日本にはない赤線だ。我々へんにまじめな
グループは片目でそれをながめながらあちこち歩き回った。犬の
糞をふんずけながら。ほんまにアムスはくそだらけだった。

(マリファナ、ハッシシのことを”くそ”隠語でという)
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