少女は偽りの恋
そしてツグミは、心外な気持ちで一杯になった。
どうやら…、
この、人を「アンタ」呼ばわりする男は、器量好みではないそうだ。
むしろ顔立ちなど全く目に入らないような良い意味での珍種だ。
彼は小都音を目の当たりにしても、全く動じない。
単なる好み違いとも思えるが、
少なくとも今迄のツグミの観察からすると、彼女の容姿にケチづける人は居なかった。
ツグミはそんな麗しい小都音にも心動かないような男を目にし、感動を覚えた。
そして、ある事にやっと気が付いた。
「…名前、伺ってもいいですか。」
どちらに聞いた訳でもないが、ツグミはとりあえず目の前の男に目をやった。
すると予想外にも、一番最初に答えたのは、何故か小都音だった。
「黛小都音です。」
さっきまでの冷めた彼女は一体何処に行ってしまったのかと不思議に思う程、小都音は嬉嬉として答えた。
それに吊られてか、彼女の前に座っていたずっと無言であった色男は微笑んだ。
「ことね?
どうゆう字を書くの?」
「小さい都の音です。」
「三文字?」
「そうですね。」
小都音は何が面白いのか、肩を竦めてクツクツ笑っていた。