魔王に甘いくちづけを【完】
闘いは五分と五分。

全くの互角に見える二羽の勢いはどんどん増し攻撃はより激しさを伴う。


どのくらいの時が経ったのだろう。

白フクロウの頭を尖った嘴がビッ!と捕えたその後すぐ、白フクロウの爪が鷹の脚と翼をガガッと捕えた。


互いに疲れ切り、白フクロウの額の部分と鷹の脚と片翼に傷が出来赤い血がたらりと流れた時、漸く二羽は離れた。


双子のように生えた二本の高い木のてっぺんにとまる白フクロウと鷹。

睨みあうも、全く動けなくなっていた。


鷹は自らの傷の酷さに戦意を失い、白フクロウは体力が底をついたよう。


やがて鷹がふらつきながらも羽を広げて空の彼方に消えていくのを見届け、白フクロウもゆっくりと羽ばたきをしてユリアのいる城宮の部屋へと飛び立った。


これまで、互いの存在に気付いてはいたものの牽制し合いぶつかることは避けていた。


今が初の遭遇。


結果は、白フクロウの辛勝。




開けられた窓の中に飛び込み力尽きそのまま床にへたり込めば、ユリアの叫び声が小さな鼓膜を揺さぶった。



「白フクロウさん!?どうしたの―――っ」



ガラス玉の瞳に急ぎ駆け寄るユリアの心配げな顔が映る。


白フクロウにしてみれば、スピードのある鷹を相手にした久方ぶりの全力の闘い。

熟練した無駄のない動きと卓越した技を用いながらも、やはり疲れ果ててしまった。

平穏に慣れ、なまってしまった体を自分ながらに呪いつつも懸命に帰りつき、主の無事な顔を確認して安心する。

自分が守ってるのに、このお方に何かあればラヴル様に申し訳が立たない。


前に一度細い腕の中で味わった何とも居心地のいい温もり。

それを今再び味わうことなく、意識はそこでぷつんと途切れた。



「ユリア様どうされました!?」


震える綺麗な手が、そっと白フクロウの体を抱き上げる。



「傷があるわ、動かないの・・・室長、早く・・・お願い!早く、ジークを呼んできて!!」



室長が風のように廊下に駆け出れば、尋常じゃない騒ぎを聞きつけた衛兵が二人バタバタと駆け付ける。



「どうかなさいましたか!」


「この子が動かないの。ジークは?」



衛兵の一人が腕の中でぐったりと横たわる白フクロウの息を確認し、後の一人はユリアを宥める役を請け負う。



「落ち着いて下さい。ジークはすぐに参ります」



「お願い・・・助けて。この子を助けて―――」
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