恋のレシピの作り方
 奈央が話し始めてどのくらい時間が経っただろうか。先程までまばらにいた客も、今は奈央だけになってしまった。


「そうだったか……あいつ」

 一通り話を聞き終え、事情を把握した北川は、煙草を取り出して慣れた仕草で火を点けた。そして、ため息混じりに紫煙を吐き出すと困ったように頭を掻いた。

「司のやつ……あいつな、パリにいる時はあんなんじゃなかったんだよ」


「あんなんじゃ……って?」



「料理に対する情熱っていうのかな、料理のためならなんでも努力を惜しまない、貪欲なやつだった」



 奈央はつい、今でもそうです! と口をついて出そうになったが、思いとどまった。果たして今もそうだと言えるかわからなかったからだ。
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