夢の外へ
こんな時杏樹だったら、性格と仕事柄で素直に彼の話を聞いていることだろう。

「セフレだったんだ」

千景が言った。

「えっ?」

ビックリして思わず千景を見た。

「悪い言い方をするなら、セフレ。

いい言い方をするなら、仲のいい女友達。

あかりとはそんな感じのだった」

千景は呟くように言った。

そうだったんだ。

てっきり私は、恋人同士だったのかと思ってた。

「あかりとはお互いの都合がいい時に会って、何となくだけど躰を重ねてた。

つきあってるとか、恋人同士とか、そんなことは考えたこともなかった。

けどそう思っていたのは、俺だけのようだった。

あかりの思いに気づいたのは、親に結婚のことをとやかく言われて、婚活パーティーで明日香と出会って約束をした後のことだった。

あいつに言ったんだ。

“結婚するからもう終わりにしないか?”、って。

そしたら…泣きながらダダをこねられた」
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