キミが望むのなら
―――――――――……
「悠さん、どうしたんですか?ボーっとして」
「あっ、おばあ様。ちょっと昔を思い出してて……」
「思い出に浸るのもいいですけど、お嫁さんの着替え、終わったみたいですよ」
そう。
俺は今年、結婚する。
今日は紺野呉服店で、その式で着る色打掛の試着に来た。
「白無垢は見なくていいんですか?」
「それは式で見たいんで」
「そう」
この4年で再発もなく、おばあ様はゆったりとした生活を続けている。
俺が後を継いで1年目は、それはまぁ、凄い厳しい指導をされたけど……
それが無くなったってことは、俺のことをやっと認めてくれたってことかな……?
「悠さん、着替え終わりましたよ」
美智花さんが、綺麗な白い指を引き、そこから誘導する……
「あぁ、やっぱり俺の思った通りだ」
「ふふっ、悠君の選んでくれた色打掛は似合ってる?」
ふんわりと、甘い甘い桃の香りが俺の鼻をかすめる。
この笑顔が……俺の望んだ笑顔。
「うん……。綺麗だよ。桃香……」
そう、俺は桃香と……
鈴木桃香と、今年結婚する―……