キミが望むのなら
「就任の挨拶が終わり次第、九州に行く」
「悠君っ!!」
俺は諦めない。
こんな簡単に手放せるほど、俺はバカじゃない。
桃香が俺から逃げるなら、俺は桃香を追いかけて捕まえるまでだ。
ごめんな、桃香。
お前が好きになった奴は、諦めが悪いんだよ。
急いで着替えて、準備を終わらした。
「悠さん」
「おばあ様、いつでも大丈夫ですよ」
「では、すぐに挨拶をしましょう」
藍色の着物を着たおばあ様が、自分の襟を整える。
「挨拶は10分を予定してましたけど、早く終わらしても構いません」
「え?」
店に足を踏み入れようとした瞬間言われた一言。
「早く会いに行かないといけない人が居るんでしょ?」
「……おばあ様」
「きちんと、会って気持ちを伝えてきなさい。それに、あの子の瞳は嫌いではありません」
……え?
なんで、おばあ様が桃香のことを……?
「あなたが病院に連れてきた時に、分かりましたよ。あなたにとって特別な人だって」
「ふっ、ありがとうございます」
おばあ様に笑いかけると、おばあ様も少し微笑んで、店に一緒に足を進めた。