キミが望むのなら


空港について、すぐに飛行機の手配をした。


でも、今日に限って満席。


「お願いします!すぐにでも行きたいんです!!」


「お客様、そう言われましても……」


「今日中に行きたいんです!!」


「……キャンセルを待っていただくことしかできません」


今の俺にはそれしか方法がなく、椅子に座りひたすらキャンセルを待った。



やっと空きが出たのは、最終の飛行機で、夕日が沈む頃だった―……。


それから、飛行機の中でも、桃香の家に移動ためのタクシーの中でも、思い浮かぶのは桃香の……笑顔だけだった。




「……ここか」


マンションを見上げる。


ここの4階に桃香が……



「ふぅ―……」


緊張する気持ちと、逸[はや]る気持ちを抑え、マンションの中に入った。



そしてオートロックのインターホンを押し、呼び出しをしようとしたその時……


「……んで」


小さな声と共に、甘い桃の香りが俺の鼻に届いた。


振り向くと、目を大きく見開いた桃香の姿が……



「もも……」


「なんで居るのっ!?」


シーンとしたここでは、桃香の声が響いて聞こえる。



「……え」


「あたしがどんな思いで離れたと……」


「桃香……」


何だよ……


それ……


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