キミが望むのなら
「本当にそれは桃香のせいじゃないんだ。俺も、あの時は逃げたかった。だから、あの時に4代目になってなくてよかったって思ってるんだ」
「……ほんと?」
体を離すと、少し俯きながらそう聞いてくる桃香。
「嘘じゃないよ。それに、あの時4代目になっていたら、夢が何なのかわからないまま過ごしていたと思う……」
夢を持てたのは……
夢に気付けたのは、俺の中で時が過ぎて、自分を見つめることが出来たからなんだ。
だから、あの時に就任してなくてよかったと、本当に思っている。
「桃香が突然居なくなって、目の前が真っ暗になった……」
「……悠君」
「もう、こんなことやめて」
「……ごめん」
シュンと肩を落とす。
「反省した?」
「した……」
「じゃあ、俺の言うこと一つ聞いてくれる?」
「え?」
パッと顔を上げて、不思議そうに首を傾げる。
「もう一つ、夢が出来たんだ」
「夢……?跡継ぎ以外に?」
「そう、それ以外に。凄く凄く大事な夢。だから、それを桃香に叶えてほしい」
「えっ!?あたしにっ!?」