血塗れの蝶
『マジで・・・。』

「なんでいなくなったの?」

"いなくなったの?"か・・・。
"いなくなった"んじゃなくて、
"いなくならなきゃ"いけなかったの・・・。


―――――――――――。

あたしが芸能界を抜けたのは、
深いわけがある。

あの頃のあたしは、全国的に有名だった。
外国のテレビにも、何回も出演した。
全国で1位のトップアイドルだった。

あたしの芸能名は、「蝶」。
だったはずなのに、いつの間にか
「黒蝶」と呼ばれるようになった。

~~♪~~♪

いつものように、お風呂でも
着替えの最中でも、食事をしていても、
歌を歌っていたあたし。

「黒蝶さん。何か得意な楽器ってありますか?」

『楽器ですか?ん~、バイオリンですかね?』

「引いてみて下さいよ!!ここにありますから。」

『えぇ、よろしければ?』
そう言って弓を持ち、引く体勢に入った。

あたしは新世界の第四章を引いていた。と、
その時・・・。

『~~ッ!!』

「大丈夫ですか!!?・・・ちょっと、
 首を怪我したじゃないですか!?」

あたしのマネージャーは、テレビの人に
怒っていた。

サビに入って、気持ちよく引いていたら、
いきなりビンッとかいって、弦が外れた。

その弦があたしの首を切ったのだ。

大した怪我じゃない・・・。

そう言おうと口を開いたが、
なぜか言葉が出てこなかった。

―――――――――翌日。

あたしは病院にいった。

声がでなかったのは、耳でいうと鼓膜が
敗れたのと一緒で、声を出す何とかを、
傷付けたからだと言っていた。

治るのは、1年後だと言っていた。

冗談じゃない・・・。
明日にはコンサートの打ち合わせがあるのに・・・。

そんな理由であたしは、芸能界から
姿消した・・・。
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