血塗れの蝶
男の名前は坂沼 楓。
(さかぬま かえで)

とにかく、美月家はあとにして
桜神の溜まり場へと急いだ。



―――――――。

ガシャンッ

「総長!?どうしたんッスか?!こんな
 時間に…?」

こんな時間にって、まだ7時だぞ…?

『客だ。幹部はいるか?』

あたしは下っ端の遼にそう、
問い掛けた。

「いいえ。先程、出掛け
 ましたけど…。」

『なら、いい。いいか?戻って来ても
 絶対にいれるなよ?…入れたら
 どうなるかわかるよな…?』

あたしは黒笑を遼に向けた。

「ヒィィィッ!!!!!絶っっっ対に
 入れません!!!!!」

『うむ。わかってるじゃん?』

あたしがそう言うと、遼は
苦笑いをした。

『楓、こっち…。』

「…あぁ。」

ガチャッ

あたしは楓を幹部室まで通して、
向き合うような形で座った。

『んで?誰を助ければ言いわけ?』

「人助けじゃないんだ。ただ、欧嵐を
 潰したいだけだ。死蝶なら
 わかるだろう?欧嵐を潰して、
 更に有名になりたいだろ?」

あたしは「欧嵐」の名前に肩を
ビクつかせた。


欧嵐―――――。

それは、琥畏の率いる暴走族の名前。
現在、全国NO.2の族だ。

潰したい?



―――――そんなことはさせない。



『その協力は出来ない。』

「…どういう意味だ!?」

『あたしは潰したくはない。
 相手が攻めてこないなら、
 あたし達、桜神も潰しになんて
 掛からない。
 …お前、族の世界を甘く
 見んなよ!?』

「クッ…。知るか!!死蝶なんかに
 頼らなければよかった!!

 藍蝶なら…。藍桜組だったら…。
 恨みのある美月組を潰すのに!!!」

楓はそう叫んであたしに…。

『……お前、組のモノなのか…?』

銃を向けてきた。

『よせ。あたしを殺したってなんの
 意味もない。あと片付けは
 どうしてくれるんだ?』

久々に銃を向けられて、怖がるよりも
それが本当の勇気なのか、
偽者なのか試したくって挑発的に
あたしは、言った。


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