スイートなメモリー
三枝君は、私の頬に添えた手を離してお風呂場へ消えた。
取り残された私はどうしようもない。
どうして、どうしてさ。
そうやって決定権を私にゆだねるの。
自分で決めろって言われたらさ、私、今日のことを三枝君のせいにできないよ。
三枝君からメールアドレスを教えられたから自分も教えた。
食事がしたいって言われて一緒に行った。
誘われたからついてきた。
抱きたいと言われて抱かれた。
拒否しなくても、それでは私の意志はない。
私の意志がなければ、「だって三枝君が」という前提で言い訳をすることができる。今までずっとそうしてきた気がする。
全ては男の人が決めてくれた。
責任を負いたくない。
私は、傷つきたくない。
けれど、三枝君は「芹香さんが決めて」と私に選択権をゆだねる。
このまま三枝君と向き合って、いつか三枝君の私への興味が薄れたら。そうしたらきっと私は傷つく。
それが怖い。
三枝君に惹かれているからこそ、向き合うのが怖い。
しばらくは楽しく過ごせるのかもしれないけれど、その先になにがあるかわからないから怖い。
けれど帰りたいとも思わない。
帰ったって構わないのに。
さっきのタクシーと同じ。
三枝君が出てくるのを待っている。
火をつけたタバコが、吸わずにいる間に灰皿の中で燃えてゆく。どうすることもできなくて、じっと眺めていたら灰皿の中のタバコがぼやけてみえた。
自分がずるいとわかっているのに、どうして泣くんだろう。
つまらないプライドなんか捨ててしまえばいいのに、けれど、そのプライドを捨ててしまった後が怖い。
取り残された私はどうしようもない。
どうして、どうしてさ。
そうやって決定権を私にゆだねるの。
自分で決めろって言われたらさ、私、今日のことを三枝君のせいにできないよ。
三枝君からメールアドレスを教えられたから自分も教えた。
食事がしたいって言われて一緒に行った。
誘われたからついてきた。
抱きたいと言われて抱かれた。
拒否しなくても、それでは私の意志はない。
私の意志がなければ、「だって三枝君が」という前提で言い訳をすることができる。今までずっとそうしてきた気がする。
全ては男の人が決めてくれた。
責任を負いたくない。
私は、傷つきたくない。
けれど、三枝君は「芹香さんが決めて」と私に選択権をゆだねる。
このまま三枝君と向き合って、いつか三枝君の私への興味が薄れたら。そうしたらきっと私は傷つく。
それが怖い。
三枝君に惹かれているからこそ、向き合うのが怖い。
しばらくは楽しく過ごせるのかもしれないけれど、その先になにがあるかわからないから怖い。
けれど帰りたいとも思わない。
帰ったって構わないのに。
さっきのタクシーと同じ。
三枝君が出てくるのを待っている。
火をつけたタバコが、吸わずにいる間に灰皿の中で燃えてゆく。どうすることもできなくて、じっと眺めていたら灰皿の中のタバコがぼやけてみえた。
自分がずるいとわかっているのに、どうして泣くんだろう。
つまらないプライドなんか捨ててしまえばいいのに、けれど、そのプライドを捨ててしまった後が怖い。