スイートなメモリー
稟議書を書き直しながら、仕事終わったら飲みに行こうと考えた。
ストレス発散をしなくてはならないような気分になったのだ。
仕事以外の趣味の面では俺はかなり熱心だと思う。

定時を告げるベルが鳴る。
女子社員を含む同僚数名が連れ立って飲みに行く相談をしており、俺も誘われたが断った。
どうして仕事以外の貴重な時間を君たちに割かねばいけないのか。
「ごめんー。俺、他に約束あるんだよね」
「なんだよ付き合い悪いなあ」
「えー。三枝くん行かないの? デート?」
「ひみつー。じゃあおつかれさまー」
タイムカードを押して一度振り返ったら、前崎係長は熱心にキーボードを叩いていた。
ごめんなさい係長。
稟議書は書き直しが間に合わなかったので明日出します。

俺は職場から離れられる開放感で、うきうきしながら恵比寿駅へと向かった。
恵比寿から六本木って近くて嬉しい。
そう。いくつかの内定をもらった時に、今の会社を選んだのは恵比寿という立地条件も手伝った。
あまり六本木に近すぎては遊びすぎてしまうし、遠ければ六本木から足が遠のいてしまう。
俺は学生時代から通っている店に適度に行きやすいということを一番の条件に会社を選んだ。
そりゃあ仕事に身が入らないのも仕方がないというものだ。
だって遊ぶほうが楽しいんだから。
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