スイートなメモリー
この前の新宿での出来事を思い出す。
あの時私は何も考えずに、三枝君のしたことを受け入れてしまったけれど、正直ちょっと怖いと思ってる。
人の趣味にあれこれケチをつけるのもどうかと思うので、三枝君がいわゆるそのSM趣味というのを持っているからといって嫌いになったりはしないのだけれど。
かといって、では私自身がそうした趣味を受け入れられるかどうかといったら、それはわからない。今度はダメかもしれない。
もし受け入れられなかったら。三枝君が私の許容範囲を超えたことを要求してきたら。そして私がそれを拒否したら。
三枝君は私のことなどいらなくなってしまうのじゃないだろうか。
ただでさえ、私は三枝君の若さにとても引け目を感じている。
もっと若くて可愛い女の子とつきあったほうが彼のためなんじゃないかと考えて、どうして私なんだろうって思ってる。
でも、そう思えば思うほどに私は三枝君を手放したくなくて、彼をつなぎ止めておくためになにができるだろうと考える。
……言うことを聞いていれば、側に置いてもらえるのだろうか。
彼が望む通りにしていれば、捨てられないでいられるだろうか。
私はどこまで耐えることができるだろう。
首筋にそっと触れてみる。
首輪を嵌められた時、とても不思議な気分だった。
もちろん、三枝君以外の人との間でそんな行為をしたことはただの一度だってない。そもそもそういう趣味の人が自分の身近にいるというそのこと自体が既に驚きだ。
もっと驚いたのは、自分がそれを割と素直に受け入れたということなのだけど。
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