ラッキービーンズ【番外編】
「分からないよ」


八木原くんが私をからかって楽しんでるなんて思わないけど。

だって私をからかっても、真剣に悩むだけで、面白くないと思うし。


だから素直な気持ちを口にすると、斜め前を歩いていた八木原くんが振り返って笑った。

少しバツが悪そうに。


「メイちゃんを困らせたいんじゃないよ。どっちかっていうと水嶋さん」

「……水嶋?」


思わぬ八木原くんの発言に、眉をひそめる。

だって、それって八木原くんは本当は水嶋のことが……。


「あ、そんな深刻な顔しないで。嫌ってるわけじゃないから!」


私の不安を表情で悟ったらしい八木原くんが慌てて弁明したから、ホッとした。

普段から仲の良い二人を見ているからこそ、その関係が上辺だけだったなんて言われたらショックが大きい。


「じゃあ、なんで……」


水嶋を困らせようとするの?

八木原くんの目的が自分じゃなくて、水嶋の不安をあおることだと知って、急にそわそわと落ち着かなくなった。


だって八木原くんの思惑にまんまと乗っかってしまった私はまるで共犯者みたいで、いたたまれない気持ちになった。


「俺が水嶋さんを尊敬してるのは事実だけど」

「……うん」
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