ラッキービーンズ【番外編】
「水嶋さんって、隙がないっつーか」

「……うん」

「何でも完ペキにこなすじゃん?」

「……うん」

「男から見てもかっこいいなって思うけどさ。ちょっとぐらい人間らしいところ見てみたいって心理……、分かる?」

「……」


分からないでもない、なんて口には出せないけれど、そう思ってしまった。

だって私も思ったことがあったから。


この男に慌てることなんてあるんだろうかって。

例えば水嶋が仮面を被ってるとかは思わないけど、それが水嶋の素なんだろうけど、確かに水嶋は何でもひょうひょうとこなすイメージがある。


リアちゃんに誘惑されてる間に、私がいなくなったら慌てる?


八木原くんの言いたいのはそんなところなんだろう。

水嶋が焦ってる様子を見たいと。


「そんなことのために、私やっぱり嫌だよ……」


寒さで早足になっていた足が止まった。

コンビニの明かりはもう見えているというのに。


「やっぱり戻ろうよ」

「……そっか、残念! でももう目的は果たしちゃったかもね」

「……」


今頃、水嶋は消えた私と八木原くんに気づいているだろうか。


「それとも案外リアちゃんとお楽しみ中だったりして!」
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