ラッキービーンズ【番外編】
私の眉間にシワが寄ったのを見て、八木原くんが笑って肩をすくめる。


「じゃ、コンビニであったかいコーヒーでも買って急いで戻ろうか」


八木原くんがそう言ったから、確かに手ぶらで戻るのも変かなと思って、その提案に乗ることにした。

もうコンビニは本当にすぐそこだったから。


はやる私の気持ちを読んでるに違いない八木原くんは、余計なものは一切見ずに、レジに直行してレジ横に並んでるホットのコーヒーを4つ買ってくれた。

お金を払うとそのままコンビニを出る。


声をかける間もないその行動に、私がただ後についていると、コンビニを出たところで八木原くんが足を止めて振り返った。


「はいっ。メイちゃん」


コーヒーの袋を私に手渡す。

自分の分はちゃっかり袋から出して手に持っている。


荷物持ちをしろってことなのかなと思って受け取ると、八木原くんは「俺、帰るね」と言い出した。


「は!?」

「だって、よく考えたら水嶋さんに殺されるんじゃね? 俺」


そう言って、ケタケタと笑う八木原くんは完全に酔っている。


分かっててやったんじゃないのかよ! という正論は通じそうにない。

確かに水嶋は怒ると思うけれど。相手が八木原くんだったらそりゃもう容赦なく。
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