渇望の鬼、欺く狐
 どうせ狩りをしても、捕らえる事が出来ない。

 狐のその考えは、狐に葉っぱや木の実だけを口にさせる理由として適していた。

 いつ家族が戻ってきてもいいように、その場所から離れぬように。

 目に映る葉っぱや、地面に落ちた木の実を食べて過ごして。

 生きる為に最低限の行為以外は、家族が戻ってくるようにと祈り続ける。

 夜も出来るだけ、起きる事にしていた。

 夜中に行ってしまったのだから。

 戻ってくる時も夜中かもしれない、と。

 そんな事を考えて。


 狐がそんな生活を続けて、どれぐらいだろう。

 もう数え切れぬ程には、狐は夜と朝とを繰り返した。

 夜中に雪がちらつく日もあるぐらいだから、もしかすると季節を越えようとしているのかもしれない。

 未だ、家族の帰りを待つ狐。

 そんな狐の元に姿を現した存在は、狐が待ちわびた存在ではなく。



『グル……』



 自分よりも数倍大きい体格と。

 口元から流れ落ちる唾液。

 鋭く飢えた目と、明らかなる捕食者を感じさせる眼光を持つ、熊の姿だった。



 



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