渇望の鬼、欺く狐
「ま、さか……、本当に……居たなんて……」



 驚愕に震えた声は、真っ直ぐ鬼へと向けられていた。

 少年を抱き込んだ男を睨み付けながらに、鬼は口を開く。



「その子を離してもらおうか」



 鬼に駆け寄りたい少年の衝動。

 やはりそれは、自分を捕らえる男の所為で叶わない。

 鬼を目に映しながら、少年は何とか逃れられないかと、体に力を込めていた。

 

「お、お前が……、人間の子供を攫って食おうとしてる事は知ってるんだ!」


「この子だって……、食おうとしてたんだろ!」



 こいつらは何を言ってるんだろう。



 抵抗を続けながらに、少年は思う。

 なのに恐怖が先立って、何も口に出来ない。

 それ程までに、男たちの目は殺気立ち、血走っていた。



「……中々、面白い事を言ってくれる」



 口元を上げて笑ってみせた鬼。

 その視線だけは、未だ低い温度を保ち続けていて。

 鬼が一歩近寄ってきた事を合図に、男たちは少年を再度取り囲んでみせた。

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