渇望の鬼、欺く狐
「その子は私の息子だ。食うつもりなどないし、私にはお前たちの言葉が理解出来ないよ」



 男たちは、さぞ戸惑った事だろう。


 鬼の言葉なぞ、簡単に信じて良い物ではない。

 きっと鬼は、嘘を吐いている。

 この少年を食らうハズだ。


 そう思いながらも。

 今、自分たちは、鬼の少年への想いの深さを、その目で確かめてしまったのだから。

 偽りを感じさせない、と。

 皮肉にも、自分たちが感じてしまったのだから。

 鬼を疑う気持ち。

 鬼から伝わった真実。

 何を信じればいい?

 何が正しい?


 すでに男たちの胸中は、鬼への殺気で満たされていた。

 その状態で。

 困惑する事態にまともな分析力や判断力など、零に等しい物だったのかもしれない。



「……本当に、この子が大事なのか?」


「あぁ。大事だよ。だから返……」


「だったら!」



 返してもらいたい、と、鬼が紡ごうとした言葉は、男が遮った事で口には出来なかった。


 
「この子を傷付けられたくなかったら……、お前の命を寄越せ」
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