渇望の鬼、欺く狐
 少年の体を押さえる男の腕が、細い少年の首にしっかりと絡められている。

 短く苦しそうな声を上げた少年を見て、鬼は咄嗟に声を放っていた。



「止めろ! どうしてそうなる!」


「煩い! 鬼を生かしておくわけにいかない!」



 鬼から伝わる、真実を思わせる愛情。

 それはきっと、男たちの許容範囲を超えてしまったのだろう。

 鬼とは残酷で非情で。

 感情など、持ち合わせぬ物だと理解していた。

 実際のところ、ここへ来るまでは、鬼なんて空想上の生物でしかないと、男たちは思っていた。

 だからこそ、こうして目に映してしまえば、自分たち人間の中に普及する一般的とも言える知識を、鬼へ掲げるしかなかったのだろう。

 それ故に、鬼の少年に対する態度が、異常に見えてならなかった。

 困惑は渦巻き、男たちの視野を狭め。

 やがて強い固定観念に基づいてしまったのだ。



 鬼を殺さなければ、と。

 殺さなければ、またこの鬼は人間の子供を攫いに来る、と。



 戸惑いや困惑を抱えながらも。

 自分たちの手元に居る少年を利用すれば、鬼は抵抗出来ないのでは、とまで策を講じて。
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