渇望の鬼、欺く狐
 ――藍を守れ。その為には、どうすればいいか考えるんだ。


 考える?

 抵抗して逃れる事しか、思い浮かばない。

 そしてそれは叶わなかったのに。



 少年の見下げた視界に映る男の腕。



 ……この腕が邪魔なんだ。



 考えるまでもなく、少年は思っていた。



 ――急げ旭。


 ……母ちゃんを殴る、あの枝が邪魔なんだ。



 少年の心に湧き出す悔しさ。

 その悔しさは、少年に奥歯を噛み締めさせて、握った拳に力を込めさせる。



 ……母ちゃんを殴る、あいつらが邪魔なんだ。

 俺を離さない、こいつが邪魔なんだ。



 少年の目が、強い物へと移り変わっていく。

 誰に気付かれる事もないであろう少年の変化に、この場でたった一人、気付いた者が居た。



「あ、さひ……? 駄目、だ……」



 繰り返し男たちからの攻撃を受ける鬼。

 鬼は少年の変化に気付いてしまった。

 少年の心に宿り始める、恐怖や不安以外の感情すらも。
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