渇望の鬼、欺く狐
 クスリと、狐が声に出して笑う。

 そして告げられた言葉に。



「……あの男の店のかんざし、気に入ってたんだけどねー。新しい店、見付けなきゃいけないね」



 鬼は自分の予想が、的中した事を知ってしまった。



「どうして……そんな事を……」



 更に強まる戸惑いは、体に受けた痛みを忘れさせてはくれるけれど。

 代わりに、鬼の心に痛みを植え付けてしまう物。



「あのねー。俺いつも、あそこで死んでる男の店で、藍のかんざし買ってたんだー」



 狐が少年の傍で転がる死体へと、指を差しながらに口にする。

 鬼の質問の答えとは、また違うように感じられる言葉。

 先を待つ鬼へ、狐はやはりニヤニヤと口元を笑わせながらに告げた。



「でねー? 俺、昨日もあの男の店行ったんだけどねー? その時に、教えてあげたんだー」



 楽し気な表情が、この場に似合う事はない。

 それを気に留める事もない狐は、クスクスと笑い声を漏らしながらに先を続けた。



「この町からいくつか山越えた所に鬼がいるよーって。人間の子供を攫うのが好きで、近くの町の子供は全部食べちゃったから、もうじきこの町に来るかもーって」
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