渇望の鬼、欺く狐
 だけど楓の反応は、私の期待とは反する物だった。

 眉間に皺を寄せて、難しい顔をして。



『……駄目だよ』



 言葉ですらも私の願望を否定した楓に、戸惑いを覚え乱れた心。



『何で……?』


『お前とは、結婚なんて出来ないよ』


『……っ、どうして……』



 初めてだった。

 楓との時間に、息苦しさを感じる瞬間は。

 涙が溢れる事なんて。

 これまで、ただの一度としてなかったのに。



『……お前は人間だよ?』



 こんな時ですら、頭を撫でる楓の手は優しい。

 その優しさが、余計心を痛めつけるようで。

 惨めさを増していくようで。



『何で……、何で人間だと駄目なの……?』



 心が余計に痛む事を知りながら。

 どこまでも惨めさに浸る事を知りながら。

 縋るように訴えていた。 
< 205 / 246 >

この作品をシェア

pagetop