渇望の鬼、欺く狐
楓と過ごす為、全てを捨てた。
生まれ育った地も、友人も、家族ですらも。
それでも構わなかった。
楓との時間が、自分にとっての全てだった。
『――――』
柔らかな声が、かつての名で私を呼ぶ。
その声に反応しながら。
『もう、その名前も捨てる』
私は慣れ親しんだ名前すらも、捨てる決心を抱いたのだ。
『うん?』
『全部新しくするの。そしたら最初から最後まで、全部楓との思い出だけになるから』
耳を心地良く掠めていく、クスクスと笑う声。
伸ばされた手が頭を撫でる感触も、抱き着く体の感触も。
楓から与えられる物全てに、愛しさを感じて。
『突拍子もない事を言う子だね』
『……駄目?』
他の誰かが混じった過去を全て捨てる代わりに、未来の全てを楓と刻んでいきたかった。
生まれ育った地も、友人も、家族ですらも。
それでも構わなかった。
楓との時間が、自分にとっての全てだった。
『――――』
柔らかな声が、かつての名で私を呼ぶ。
その声に反応しながら。
『もう、その名前も捨てる』
私は慣れ親しんだ名前すらも、捨てる決心を抱いたのだ。
『うん?』
『全部新しくするの。そしたら最初から最後まで、全部楓との思い出だけになるから』
耳を心地良く掠めていく、クスクスと笑う声。
伸ばされた手が頭を撫でる感触も、抱き着く体の感触も。
楓から与えられる物全てに、愛しさを感じて。
『突拍子もない事を言う子だね』
『……駄目?』
他の誰かが混じった過去を全て捨てる代わりに、未来の全てを楓と刻んでいきたかった。