渇望の鬼、欺く狐
『どうして……ここが……』



 旭を守るように抱きながら、小さく漏らした声。

 それに答えるように、男たちの中の一人が口を開いた。



『昨日、用事で村まで行ったんだ。雨が降りそうだったから急いでた』



 そこまで告げた後、更に男は口にした。



 回り道するよりも、この山を突っ切った方が早かった、と。

 その時に社の存在に気付き、近寄ってみたところ。

 死んだと思っていたハズの私と、角を生やした赤子――旭を見付けたのだ、と。

 そこでようやく私は、昨日聞いた葉を踏みしめるような音を思い出す事となった。

 今頃思い出したところで。



『……その化け物はお前の子か?』


『近寄らないで……』



 すでに時は遅かったけれど。


 少しずつ距離を詰めてくる彼らの目は、完全に旭を射抜いていた。

 彼らが何度も口にしている通り。

「化け物」を見る目で。

 その事実に憤りを感じる気持ちよりも、恐怖の方が上回ってしまって。

 せめて彼らの視線から逃れるようにと、旭を隠すように抱き込めば、彼らの手が私の肩を掴む。

 心臓が嫌な音を立てたと同時に、その声は空気を斬った。
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