渇望の鬼、欺く狐
 鬼が他の生物よりも妖力が強いという事は、すでに楓から聞いて知っていた。

 妖力を持たない生物ならば、その力は妖力を持つ者の足元にも及ばないとも。



 きっとここに居たところで、私は楓にとっての足手纏いになってしまう。

 それならば、楓の言う事に従った方がいい。



 そう判断した私は、小さく頷いて。



『……絶対追い付いてね? ……すぐ来てね?』



 そんな縋るような言葉を、楓へと伝えた。

 再度頷いてくれた楓の体を、もう一度抱きしめて。

 私は、男たちの居る方向とは反対の方へと走り出したのだ。


 
 大丈夫。

 楓は頷いてくれたから。

 きっと、すぐ追い付いてくれる。



 その期待を信じて。


 予想もしていなかった。



『こっちに来たぞ!』


『囲え! 逃がすな!』



「彼ら」が。

 集落の若い者たち全員で、ここへ来ていた事など。 
< 216 / 246 >

この作品をシェア

pagetop