渇望の鬼、欺く狐
 私と旭を逃がすまいと、数人がかりで囲う男たち。

 どれだけ抵抗しようとも、力の差など歴然だった。



『お願い! 旭を離して!』


『化け物を生かしておくわけにいかない!』


『旭は化け物なんかじゃない!』



 取り上げられた旭を取り返そうとしても、男の一人に羽交い絞めにされた体は、上手く動かす事が出来なかった。



『藍! 旭!』



 大きく響いた張った声。

 視線を向けた先に映るは、着物を赤く染めた楓の姿。



『楓!』



 来てくれた。

 本当にすぐに追い付いてくれた。

 だから、きっともう大丈夫。


 私のその考えは、次の瞬間打ち砕かれる事となる。



『二人を離せ』


『く、来るな! この化け物を殺すぞ!』



 旭の首にかけられた男の手。

 大きく声を上げて泣いた旭に、言葉を失った私と同様。

 楓もその足を止めてしまっていた。 
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