渇望の鬼、欺く狐
 あくまで狐の予想でしかない答え。

 だけど鬼の目に動揺が浮かんだ事で、それは決定的な物として狐へと伝えられる事となる。

 伝わった上で、更に狐は紡いだ。



「でね? 怖がるとしたら何かなぁって考えたの。動物も人間も、存在だけなら弱い。でも人間は、道具と頭を使う事が出来る。だから、藍がもし怖がってるとしたら、きっと動物じゃなくて、人間かなぁって」



 これまでに立てた自分の予想が、どれ程、的を射ていたのかを知りたくて。



「……怖いわけじゃない」



 その声は、小さく呟くようなか細さで、狐の耳へと届けられた。



「ただ……憎いだけだよ。……旭以外の人間が」



 再度、鬼の目に浮かぶ涙。

 涙の理由は、鬼がまた過去の出来事を思い出しているからだろうか。



「いくら旭を死なせない自信があったからと言って……、危険過ぎる……。もしもの事を考えなかったのか……?」



 狐を睨み付けながら、静かに責め立てた鬼。

 鬼からの態度に、狐は胸に痛みを覚えながらも、今度はそれを表情に出そうとはせずに。

 そっと鬼の涙を舐め取った後、言葉を口にした。



「だから俺は待ってたんだよ」



 疑問を映す鬼の目に答えるように、狐は先を紡ぐ。



「俺にはね、瘴気が見える。藍の体から出てる瘴気も、旭の体が取り込んだ瘴気も」
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