渇望の鬼、欺く狐
 鬼の告げた言葉に、少年は目から幾つもの涙を零し、鬼を抱きしめ直した。



「……っ、俺、母、ちゃんの、事……、守って、あげ、られなかっ……、母ちゃ、痛いのに……何も、出来なかっ……」



 嗚咽混じりの言葉は、あまりにも聞き取りにくい。

 だけど少年の紡いだ言葉は、しっかりと鬼へと届けられた。

 鬼もまた、揺れた感情に伴う涙を流して。

 そこに一つの声が届く。



「旭」



 狐の手が、視線を向けた少年の涙を掠め取る。



「お前は立派に藍を守っただろ?」



 その口が告げた言葉に、微かに少年の目が揺らぐ事に気付いた上で。

 更に狐は、少年へとかけたのだ。



「お前だって、自分の体がさっきと違う事に気付いてるだろ。お前はもう、これから何があっても、藍を守れるんだよ」



 少年の目に、光を取り戻させる言葉を。



「雪!」


「守、れる……の……?」



 鬼が放った言葉は、少年の疑問によりかき消される事となった。
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