渇望の鬼、欺く狐
 自分を守る為に、二人は命を落としてしまった。

 だからこそ、自分が生き続ける事は、二人にとっての償いなのだと思っていた。

 償いなのだから。

 幸せになる事など許されない、と。

 堪えようのなかった欲求は、一瞬の幸せで留めるべきだと。

 心のどこかで、自分に言い聞かせて。

 狐の口にした願望を、共感したいと思いながらも打ち消して。

 
 鬼が自分の根底を全て理解しようと、そこにある躊躇いを振り切る事は叶わない。

 すでに少年は、鬼と化してしまっている。

 永い寿命を、その体内に施してしまっているだろう。

 それを少年自身も喜んでいる、この状況で。

 鬼が喜びを感じないハズがなかった。

 だけどどうしても、失ってしまった二人への罪悪感が胸を打つ。



 どうすればいい?

 何を思い、何を感じればいい?



 自問を続ける鬼の視界。

 そこに映るは。



「か、えで……」



 会いたくて触れたくて、どう仕様も無かった愛する者と。



「旭……」



 愛する者との間に宿した、大切な存在。
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