渇望の鬼、欺く狐
 直ぐ傍で雪と絡む視線。

 こちらを覗うように見上げる雪へ軽く笑ってみせれば、雪は僅かに首を傾げた。


 
「ただの化け狐でしかないお前に、そんな事関係あるか?」



 雪の顔から一瞬表情が失われた事に気付いて。

 だけどそれは気の所為だったとでも言うように、また雪はニヤニヤと口元で笑って見せる。



「ごめんね、藍。藍が育てるって決めたんなら、それでいいよー。俺、藍には嫌われたくないからね」


「わかったら、さっさと買出しに行ってもらえると助かるよ」


「はいはい」



 雪の腕が体から離れた事をきっかけに、再度赤子の背中をポンポンと叩く。

 涙でまみれた顔を着物の裾で拭ってやりながら。



「もうすぐ温かい着物と飯が来るよ。――旭(アサヒ)」



 伝わるかどうかもわからない声をかけた。

 
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