渇望の鬼、欺く狐
 気付き、認めてしまった感情は、どうしてだか自分の心を清々しくさせてくれる。

 きっと自分は、誰に対しても一定の感情を貫いたままに、生きていくのだと思っていた。

 もう長い期間をそうして生きてきたし、それが自分の運命なのだと疑いもしなかった。

 なのに。

 旭はあまりにも無抵抗でいて、幼すぎた。

 簡単に息の根を止めてしまえそうで。

 私が拾う事をしなければ、育てる事を止めてしまえば。

 きっと旭は、すぐに息絶えてしまうから。

 私が居なければ。

 死んでしまうから。

 自分の存在がなければ、死んでしまう存在。

 それは何と心を響かせ、満たしてくれるのだろう。


 とは言え。



「……ズルいよ、そんなの」



 きっと今は、泣きそうな雪をどうにかしてやらなければいけないのだろうとも思う。

 雪だって。

 旭と同様、私が居なければ心を壊してしまう事は、もうとっくに知っていた。

 出会った時から、何一つ変わらない。

 甘えて媚びて。

 いつだって、その体勢を崩す事はなかったのだから。

 面倒臭い、鬱陶しいと思いながら。

 私はいつだって、雪を心の底から突き放そうとは思えなかったのだから。
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