渇望の鬼、欺く狐
***



「旭、ほらおいで。寒いだろう?」


「あー、あー、」



 日中も夜も、十分に冷え込むようになった。

 日の沈む時間が早くなり。

 時は一月の中旬を迎えようとしている。

 確か旭が包まれていたあの布には、【二月七日】の文字があったハズだ。

 とすれば、もうすぐ旭は一歳を迎える事になる。

 それにしても。



「旭、転んでしまうよ」


「あう、う、うあー」



 最近の旭には、少々手を焼かされてばかりだった。

 先程から呼べど待てど、旭がこちらに来る事はない。

 数ヶ月前のあの日。

 這う事を覚えてから今日までの間に、旭は立ち上がり覚束ない足取りで歩くようにまでなった。

 歩く事が楽しいのか、社の中を歩き回って。

 社の中では満足出来ないのか、わざわざこうして外に出ようと催促される。

 宥めれば、こちらの言う事を多少は理解しているのか、一人で外に出ようとして。

 ここ数日は、自分の力で扉を開ける事が出来ずに泣き出すところから、旭の散策が始められていた。

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