渇望の鬼、欺く狐
 寒さを気にする事もない旭は、ひたすらに自分の行きたいところへと足を進めていく。

 足場が良いわけでもないから、何度も何度も転んで。

 自分で立ち上がる事もあれば、泣いてしまう事もしばしば。

 抱いて泣き止めば、また地面へと降りて歩き出してしまう。

 少し前までは、あんなに抱いてほしいとせがんでいたクセに。



「あー! あー、あー!」


「石だよ、それは。大きいね」



 今では、こちらが抱こうとしても、自分で歩きたがるのだから薄情な物だ。

 ただの石や枯れた草。

 旭の興味を煽る物は、外にはいくらでもあるらしい。

 見付ける度に指を差して教えてくれるけれど、正直私にはその物の素晴らしさがわからない。

 あんなに気に入っていたでんでん太鼓も、今ではもう、全くと言って良い程に興味を示さなくなってしまった。



 ……また、雪に何か玩具を買いに行かせようか。



 外で遊ぶ事は別に構わないのだけれど。

 こうも毎日、長時間を外で過ごしていると、「いつか熱を出すんじゃないか」と心配が湧き上がってしまう事も事実だった。



「藍ー」



 気配と共にその声は届く。

 姿を見せると同時に抱き着いてきた雪に、丁度良かったと思いながら口を開いた。
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