渇望の鬼、欺く狐
 どうしてだろう。

 これまで赤子の言葉など、理解出来る物ではなかったハズなのに。

 それが自分を指している言葉だと、狐は理解してしまった。



「……俺、ゆーゆじゃねぇよ」



 そして。

 どうしてだろう。



「ゆーゆ、ゆーゆ」



 あんなにも苛立ちを感じていたハズなのに。

 いっそ、息の根すらも止めてやりたいと、そう思えていたハズなのに。



「だから……ゆーゆじゃねぇって。……雪だよ」



 胸の奥が少し熱くて。

 少し泣きそうになる。


 背中を支える手を、離す気にはなれなくなってしまう理由は。

 一体、何だと言うのだろうか。


 それは狐にすらも、まだわからない。

 狐の前で、ただただ無邪気に笑う赤子にも勿論。


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