渇望の鬼、欺く狐
「言っとくけどな……。お前がいつも食ってる飯も遊んでる鞠も、全部俺が買ってきてやった物なんだからな」



 狐の触れる赤子の背中。

 小さくて狭くて。



「俺と藍はずっと一緒だったんだ……。お前が来る前からずっと……。お前なんかより、俺の方がずっと藍と長く居るんだ……」



 なのに温かいから。

 その体温は、赤子の存在証明とも感じられて。



「……藍を一番好きなのは、お前じゃない。……俺なんだ」



 赤子を口で否定しながら。

 やはり狐の手は、赤子の背中に添えられたまま。

 離したい。

 離せない。

 どうして。

 温かい。

 鬱陶しい。

 消えればいい。

 消えて欲しい。

 もうこれ以上、鬼との時間を邪魔しないで欲しい。



「ゆーゆ?」



 どうして。

 直視出来ない?
 
< 60 / 246 >

この作品をシェア

pagetop